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01.Waterloo Sunset

 こぢんまりとしたスティーブ・ロジャースのセーフハウスには、同じくこぢんまりとした出窓がある。 西側に面したこの窓からは都会を横切るに相応しい濁った川が見え、その傍らには、老犬と寄り添い歩く老人の痩せた肩や、人生の大事なひとときを持て余す若…

02.I Don’t Want to Set The World on Fire

「懐かしい歌ねえ」 隣の部屋の窓から、絹糸のような白髪頭がのぞいている。 バッキーはレコードプレーヤーの音量を少しだけ上げてから、同じように顔をのぞかせた。目を合わせ、どちらからともなく微笑む。可愛らしい老婦人だった。彼女の顔のすぐ横で揺れ…

03.Crazy He Call Me

『何か月になるんだっけ』 無線越しに何が、と聞き返すと、サムが笑って混ぜ返した。『とぼけんなよ、バーンズとのことだ』「ああ。えーと、そろそろ四か月かな」『へえ、もうそんな経つのか』 事前に打ち合わせていた手順通りに廃ビルのブレーカーを落とす…

04.Easy Living

 バッキーはよく鼻歌をうたう。 本を読んでいるとき、ディナーを作っているとき、シャワーを浴びているとき。楽しそうに歌っているときもあれば、ぼんやりと何処かに思いを馳せているようなときもあった。ほとんどの場合歌詞はあいまいで、あとで原曲を聞い…

05.You Realy Got Me

 明かりも消さぬまま、縺れあうようにしてベッドへなだれ込んだ。破られる前に着ていたシャツを脱ぎ捨て、互いのベルトを不器用に解きあう。蹴るようにジーンズを振り落とし、いつもなら寸前まで履いたままでいるボクサーパンツまで剥ぎ取られた。今夜のステ…

06.Daydream Believer

 昔なら、この時間は教会で熱心に祈りを捧げていただろう。不格好なサニーサイドアップを皿に載せながら、スティーブは大きなあくびを一つ溢した。信仰を完全に失ったわけではないが、以前ほどの熱はすっかり失われていた。なにしろ、北欧神話に聞こえた兄弟…

07.Shangri-la

 帰る場所があるというのはいい。 それが冷たいポッドや牢獄のような実験施設でなければ、なおさらいい。多少古臭くても。「それにしても、あんまりじゃない?」 西日に照らされて赤みを増したボブヘアーがさらさらと揺れる。まるで家主のように二人掛けの…