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 はじめは、スマートフォンが故障したのだと思った。 通知領域に、次から次へとメッセージがくる。今朝もひっきりなしに鳴り響く通知音で目が覚めた。身に覚えのない時間に叩き起こされた流川は、アラームなんぞかけた覚えはない、と時間を確かめようとスマ…

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 三井が流川の住むマンションへ着いたのは、午後一時をやや回った頃だった。「……遅い」「そう言うと思って、買ってきた」 三井はそう言うと、片手でスニーカーを脱ぎながら、大きく膨らんだビニール袋を押し付けるように手渡してきた。袋の前面には、近所…

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 流川のマンションの近くには、フェンスに区切られたストリートボール用のバスケットコートがある。 ベッドルームの窓からも見下ろせるそこは、辺りがわりあい古くから拓けていた閑静な住宅街であるせいか騒がしい若者の利用が少なく、周囲の人通りもないの…

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 ラブレターを手に頬を染めながら「好きです」なんて、まるで映画か漫画のひとコマがそのまま現実に飛び出してきたみたいな光景だ。まして、そのラブレターを受け取る男が男である。 湘北高校バスケットボール部一年、流川楓。イケメンとかハンサムとか、そ…

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 ちょっとした気紛れから流川にラーメンを奢ってやって以来、視界の端っこにもの言いたげなおおきい人影をよく捉えるようになった。それが、ほんとうに端っこなのだ。注意して見なければそこにいると気付かないくらい、ほんとうのほんとうに端っこなのである…

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 合宿、というのはどうしてこうも人を浮足立たせるのだろう。 月日は足早に過ぎ、秋季国体を間近に控えたある晩夏の夜、神奈川代表チームは海南大学の合宿所を間借りした三泊四日の強化合宿の真っ最中だった。大学受験を一世一代の大博打で切り抜けようとし…

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 訝しげに眉をひそめる宮城と桜木、それから、モップを手にうろうろと様子をうかがっている一年坊主たちを強引に帰し、耳が痛むほど静かな体育館で流川とふたりきりになった。 秋季国体をいよいよ来週末に控えた金曜日、陽もずいぶんと短くなって、明り取り…