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 梅雨も明けたというのに空は朝からずっとぐずついていて、一度は辞めると言ったくせになかなか抜けきらない喫煙癖のためにちょうどよい場所を探していた水戸は、ひと気のない特別教室棟の、いまは使われていない三階の第二音楽室へ入った。 積み上げられた…

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 三井がはじめて男を好きになったのは、中学二年生の夏のことだった。 男は皆からコーチと呼ばれていた。卒業生らしく、東京の大学を終わって教員免許を取り、けれど採用試験にはなかなか受からずにいたらしかった。それで、ツテを頼りに母校のバスケットボ…

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 小さな子供連れの一団に混じって自動ドアをくぐると、西日で温められたアスファルトが安物のサンダルの底にむわりとした熱気を噴きつけてきた。 水戸が住むアパートの近くにはいいスーパーが無く、そのおかげで間取りのわりに家賃がずいぶんと安いのだから…

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 水戸の家の風呂は、昔ながらのバランス釜というやつだった。鉄男の部屋で見たことがあったから、使い方は分かる。そう正直に告げたら、水戸はやや機嫌を損ねたようだった。その名前は二度と聞きたくない、と、なにを邪推したのか水戸は低く唸るようにそう言…

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 畳のうえに転がった筒を、三井のつま先が派手に蹴飛ばした。祝卒業と書かれた金の箔押しが西日を反射し、きらきらと光る。「――花道、探してるだろうね」 水戸が笑いを堪えながら言うと、三井も悪戯っぽく目を輝かせて「だろうな」と笑った。 卒業式のあ…